小説を書きました 第二回羊文学賞 応募作「クジラ」

人生で初めて小説を書きました。

タイトルは、「クジラ」。

 

大学生の「私」がバイト先で出会った「彼」と付き合い、別れ、幸せに気付く話です。

しんとした空気が広がる、やわらかい朝に読んでほしいです。

約1万文字。30分あれば読めると思います。

monogatary.com

 

 

 

【羊文学賞

「羊文学」というバンドが好きで、1年前くらいから今までずっと聴いています。彼女たちのバンドの公式Instagramから「羊文学賞」という公募を実施していることを知り、書いてみようかなぁという軽い気持ちで書き始めました。

 

文学賞についてのお知らせページ

 

お題は、羊文学の楽曲「夜を越えて」。
この曲を聴いて、1万文字以内の物語を書くのが羊文学賞の要項でした。

 

youtu.be

 

個人的には、「絵日記」と「恋なんて」が特に好きです。

 

【内容について】

ここからは「夜を越えて」の解釈と、「クジラ」の内容について書きます。

 

1.あらすじ

あらすじ

大学生の「私」は、アルバイト先で「彼」と出会う。無条件で男の人を怖いと思ってしまう私だったが、不思議と彼だけは別だった。私は、彼との思い出を積み重ねていく。川べりのベンチ、クジラの名前のバンド、花柄のワンピース、真っ黒なレインボーブリッジ。いつのまにか、彼のことが好きになっていた。
月日は流れ、社会人になった彼にある変化が訪れる。学生のままの私は、段々と彼の言うことがわからなくなってしまい…

 

羊文学の「夜を越えて」という曲は、過去の恋愛を今の視点から振り返った曲です。「過去の恋の話」と、「今の私の現実」を交互に繰り返しながら曲が進んでいく構成となっています。ただ、当時の恋愛の後悔を嘆いているというよりは、その曲調と同じく前向きな想いを抱えています。

 

2.伝えたいこと

「夜を越えて」は、「君の言うことがわからない」状況から、「わかるような気がする」に変化するところに、曲としての凄さがあると思っています。

 

なせ変化するのか?それは、次の歌詞にある「気付き」が要因です。
僕は、この曲の中で一番言いたいことは、間奏前の次の歌詞だと解釈しています。

幸せはいつもそこにあるのに気づかない

欲しいのものばかりだね

「幸せ」は彼との日常。「欲しいもの」は彼が欲しがった理想。理想を追いかけた結果、日常が失われていく…という話は「南瓜とマヨネーズ」「花恋」をはじめとする様々な恋愛映画で描かれていますね。ちょっと違うかもしれないけど、又吉直樹の「劇場」もそれに近いものがあると思っています。

 

そしてそれまでは彼の言うことを理解できなかった私が「彼の欲しいもの=理想」を本当の意味で理解した。だから君の言うことがわかるきがする…という風に曲の中で変わっているのだと思っています。

ただ、これは本当に僕の解釈です。実際の曲では「君の言うことが何でも…」という、一番の最初の歌詞をサンプリングして終わるんですよね。これが「なんでもわかる」なのか、「なんでもわからない」なのか、はたまた一番の歌詞と同じく「なんでも正しいような気がして」なのか…

 

僕は、最後の続きは「認めたく無いけど、本当は全部わかるよ、」みたいな感覚に近いのかなと解釈しました。加えて「夜を越えて」での一番のメッセージは上記部分だと思ったので、それぞれを「クジラ」に組み込みました。

 

3.書き始めの話

書くにあたって最初にしたことは、小説で一番伝えたいことを考えることでした。

これは僕の友人が言っていた「小説を書く一番の目的は、誰かに何かを通えること」という言葉の影響を受けています。そのため「夜を越えて」の一番のメッセージである上記の歌詞を、物語の最後に組み込み、それを中心とした小説を書くことにしました。

 

書き始めた時は「幸せはいつもそこにあるのに気づかない」を字面通り受け取りすぎて、もっと絶望感がある話を書いていました。彼がインフルエンサー系のビジネスマンにはまって、夢を追いかける体で別れ、いま底辺YouTuberのようなことをしていることを、同じアルバイト先の後輩から聞く、みたいな。私と彼が付き合っていたことを知らない後輩が「あの先輩もう会えないっすよね」みたいなことを言った飲み会の夜、当時を振り返りながらあの時は幸せだったなぁと涙を流す私。その夜を思い出と共に超えて、キラキラした朝が広がる。みたいな話。

 

ただ書いていくうちに、こんな人と付き合ってた私が可哀想だな…としんどくなってしまって。というか主人公の「私」が好きになった男はもっといいヤツで、それこそ自分の芯は絶対に曲げない男でいてほしい…という願望が生まれ。最後までしんどい話から、最後はさわやかな気持ちになれる話にシフトしました。

 

頭の中に何となくあった“いい男像”を現実にするために性格診断サイトで彼の性格を疑似生成しました。ついでに「私」も。これがたぶん良かった。小説を書きながら、彼だったらこう言うだろう。私だったらこう思うだろう。と自然に言葉が浮かんだ瞬間が何回かありました。この経験ができたのは、今後も小説を書く上で必要な感覚だったと思っています。

 

4.反省点

完成した「クジラ」は「夜を越えて」を模した構成や伝えたかったメッセージ、登場人物の具体性という点ではよかったと思っています。

 

反対に反省点もいくつかあります。

振り返れば諸々ありますが、今回は大きく2つ。

 

(1)中盤の書き方

小説の文章の書き方が、わかっていません。

1章と6章、私の現在についての場面は割と小説っぽくかけたな…という想いがあります。(小説っぽさについてはまた今度解釈します)ただ2-5章、私と彼の過去の話をしている部分は、すべて文末が「だった」と過去形で統一しています。

 

初めて書いて分かったことですが、文末について考えることは本当に難しく…時間的な猶予や考える労力を計算し、今回のクジラの過去編はすべて同じような文末にしました。友人にこのことを相談したら「俯瞰しきれてない」とアドバイスをいただきました。俯瞰。次書くものはもっと第三者的な視点を意識してみます。ありがとうね。

 

(2)時間の使い方

時間の使い方、下手です。

書き始めたのが締め切りの一か月前くらいだったと思うのですが、その後のスケジュール配分が下手でしたね…。元々3割くらいしか終わってなかったものを、締め切り前の土曜の夜に23時から3時くらいまでで6割くらい終わらせて、残りの4割を次の日の日曜に夜3時半までかかって書き終えた…という感じです。

 

出来上がったものを見直してみると誤字脱字があったり、表記の誤りや不自然な書き方が散見されました…。時間をかければ良いというわけではないけれど、それでも百点を目指す努力はするべきだと思っています。正直、今回の「クジラ」は、時間のが足りなくて、無理やり完成させてしまったところが強いです。

また内容についても、もっと推敲できたなぁという想いがあります。私と彼の「幸せ=日常」部分を、もっと色濃く書けたような気はするし、彼と私の別れのシーンも、もっと切に迫った文章が書けたのではないか…と反省しています。特に最後の6章は時間が無かったので無理やり書き終えました。正直眠すぎてどうやって書き終えたのか覚えてないです。

 

それもこれも全部、時間がもっとあったらできたよなぁという当たり前の反省ですね。

次回書くときは締め切りの一週間前には書き終えて、誰かに読んでもらったりして、修正を加えて余裕をもって提出…みたいにしようと思っています(きっと無理)。

 

【書けて良かった】

それでも本当に思うのは「書き終えて良かった」という気持ちです。達成感というほど充実したものではないし、これで人生が変わる…といったような確信でもない。正直、小説としての質だって、自分が思いっきり胸を張って「書きました!」と言えるほどのものでもない。もし自分で点数をつけるとしたら、45点くらいだと思う。

 

それでも、本当に書けて良かったと思います。内容がありきたりでも、誤字脱字があっても、自己評価が45点の文章でも、書き終えることが大事だと、今の自分は思っています。何者で有村架純が言ってました。「10点でも20点でもいいから自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。」まったく本当その通りです。「クジラ」を書いてる途中、「絶対上手に書けないからやめようかなぁ」と諦めかけましたが、その都度彼女の言葉を思い出し、いかんいかん、書かねば。と机に向かうことができました。有村架純、ありがとう。

 

やりたいことをやりたいことで終えないために、一つ一つでいいから、まずはやること。やり終えること。なんだか人生で初めて、自分がやると宣言したものを、最後までやり通せた気がします。

 

僕はこの先の将来について、なんとなくでしか考えていません。エッセイストやコンテンツライターになりたいのかも、文章を書いて小説家になりたのかも、今の仕事でプロフェッショナルになるのかも、教師になるのかも、全然違う仕事をするのかも、わかっていません。

 

それでも、向こう2年くらいは小説を書くことになると思います。いろんな公募に応募して、今までの人生の中で書きたいと思っては消えていったアイディアや人物、文章を昇華し続けることになると思います。

でもこれは、小説家になりたい、みたいに純粋な目標ではなくて、今しかできないことを一つづつやっていこう、みたいな感覚に近いです。

これから、書けるものをどんどん書いていこうと思います。

 

最後に。もし、これを読んでいる人がいるならば、ぜひ「クジラ」を読んでください。そしてTwitterでもコメントでも何でもいいので、感想を教えてくれたら嬉しいです。

 

以上です。ここまで読んでくれてありがとうございました。