怪物

今さらながら「怪物」を観てきた。めちゃくちゃネタバレありの感想。

 

 

結論として、ちょっと苦手な映画だった。理由は、主人公である湊と星川が抱えている悩みが性対象が同性愛である所以だったこと。男性を好きだったり性的指向がマイノリティが主人公の物語、最近多くないか?同性愛者や性的指向がマイノリティが抱えている絶望をフィクションにされると、人が死ぬことで絶望や悲観、人生の意味を考えさす創作物と同じような、簡易的な意義付けを感じてしまう。『流浪の月』を読んだ時もそうだった。ああはいはい結局この主人公の悩みはマイノリティのやつなのね、って。性的指向が少数派の主人公だと、ポリコレ意識したディズニー映画よろしくのきな臭さが香る。ここまで書いて幾ら何でも私自身にバイアスかかり過ぎな気もしてきた。自分がゴリゴリのマジョリティだからってのもあるだろうけど、単純に苦手なんだろうなそういう話が。ホラーとかサスペンスが苦手なのと同じように、マイノリティな悩みを抱えている主人公の話が好きじゃないのかもしれない。なんつーか、やりたいことがあるのに周りの目が気になって踏み出せないとか、友達どんどん結婚する焦燥感とか、いつのまにか26歳になる逼迫した現実とか、そういう日常的で普遍的な絶望ってあるだろ。もしかしてそういう手の映画ってやりつくされてるんかもな。

 

構成の感想でも書くか。劇中人物の話を数十分毎に分けて、各視点毎のストーリーを展開することで、130分の長尺が中編の繰り返しとなり、観ている側の負担にならないのが凄いと思った。よく考えてなかったけど『花恋』とか『ちょい思』とか、中編を繋ぎ合わせてひとつの映画にするのって邦画のトレンドなんだろうか。先に出てきたモチーフが中盤や後半でその意味が判明するの、マスカレードホテルみたいで良かった。観たことないけど。是枝裕和、そういう事も出来るのか~と思ってたけど演出的に坂元裕二の仕業かもな。星川君の家のインターホン、湊の母親が来た時と保利先生が来た時で形が違ったの、なんかの伏線なんかな~って思ってたら特に何もなく終わった。あれなんだったん?

 

とは言いつつも「誰かから見たら誰かが『怪物』」を表現するために、誇張し過ぎてる気がした。モンペに対しての校長の対応ってあんなに人間味無いのか?恐ろし過ぎて保利先生パートや湊パートん時の校長諸々全然善人に見えなかったんだが。普通にナチュラル怪物多くなかった?

 

「かいぶつだーれだ」は怖い呪文のような意味合いかと思ったら、二人にとってはただのインディアンポーカーよろしく自分の頭上にあるイラストを当てる只の遊びだった。星川君がトイレで辛さを誤魔化すように口にしているのが逆にしんどみを増していました。

 

物話の肝が苦手なテーマだったけど、映像の綺麗さとか端々の言葉選びに是枝監督と坂元裕二を感じてニコニコしちまったな。安藤サクラと保利先生が秘密基地侵入するシーンは作り物の中で必死になってる2人がちょっと滑稽に見えちゃったけど。最後結構グロテスクな終わり方なのにキラキラしながら終わるの怖すぎる。やっぱこの映画ホラーだな。そういえばホラー苦手だったわ。