「明け方の若者たち」を読んで
こんばんは、森林です。
今日はカツセマサヒコさんの「明け方の若者たち」を読んだ感想、思ったことなどについて書きます。
「明け方の若者たち」がどういう本か、ということに関しては説明が面倒なので、以下のリンクを貼っておきます。あらすじや一番言いたいメッセージなどについての記載があるので、是非。
【マジックアワーという言葉】
この小説で一番言いたいことは、「人生のマジックアワーを大切にしろ」だ。マジックアワーは大学生を卒業し、社会人になったばかりの人たちが過ごしている時間だ。学生のように自由過ぎることもなければ、大人のように責任をしょい込みすぎることもない。おそらく、今この瞬間が僕の人生の中で最も自由な時間だ。
僕は大学生の時に高校生を見て「いいな~あいつらまだ青春できるのか~」とか思ったことがある。カツセマサヒコもそんな風に、社会人になったばかりでこんなはずじゃなかった人生に絶望しながら生きる理由を探している僕らを見て、羨ましがっているに違いない。
絶望や失望の最中にいる人からしてみれば「こっちは自分がどう生きていけばいいかもわからないのに、羨ましがってるんじゃないよ。好きを仕事に生きている、この勝ち組ライターが」と思うだろう。(僕はカツセマサヒコにはかなりの嫉妬心を抱いている)だけど、悩んだり迷ったり、死にたくなったりしても、「若者」として今この瞬間を生きていることが羨ましいんだと思う。
僕はというと、若者という立場を最大限に利用している。先のことなんて全然決まってないけど、自分がやりたいことの為にレールから外れた。一ヶ月限定の1人暮らしをした後で、高校の友達とシェアハウスを始めてみたり、そいつらと夜の3時まで飲んだ後に6時半に起きて仕事に行ったりしている。学生とも大人とも違う、もうすぐ無くなってしまう「若者」という特権を振りかざしながら、今日も生きている。
カツセマサヒコは以下のインタビューで「今が一番楽しいんだぞ!ってことに気が付いて欲しくてエモいツイートをしている」と述べていた。
「明け方の若者たち」も、こんなはずじゃなかった人生を送っている若者に対して、それでも今が一番楽しいマジックアワーなんだぞということを伝えたいんだと思っている。
【恋とか愛とか】
「明け方の若者たち」は決して恋愛小説では無い。若者が悩む要素として「仕事」と「恋愛」がでてくる。
ただ、恋愛に関する描写や言葉選びはカツセマサヒコ節が光る。普段のエモいツイートのような、共感と寂しさを含む文に僕も何度も心を揺さぶられた。
「明日早起きして車出してモーニング食べにいこうよ」って約束して目覚ましかけて寝たのに朝からセックスして二度寝したら昼過ぎになっててもういろいろ諦めて、夕方くらいにようやく身支度して近所のラーメン屋と帰り道の缶酒で一日おわるような6月の土日をしたい。
— カツセマサヒコ (@katsuse_m) 2020年6月5日
こんな風な文がずっと続いている。どこかで見たことある景色や、心が動いた瞬間が文字というテキストを通じて僕の記憶を揺さぶる。以前友人が「全てに対して『わかる』と共感してしまうのは、自分という存在が無くなる気がして少し怖い」と言っていた。そういう面からするとある意味ホラー小説になるのかもな。
この小説の主人公は「彼女」のことを病的に好きになってしまう。物凄く高い温度で人を好きになったことがあって、「嫌われてもいいからこの人の中に僕という存在を残したい」みたいな歪んだ愛情を持ったことがある人であれば、この小説は痛いほど面白いと思う。
余談ではあるが、「明け方の若者たち」の幻冬舎が行っているキャンペーンとして「自分が一番好きな一節をインスタに投稿しよう」というのがある。僕はそれに以下の一文を選ぶつもりだ。
それでも彼女の人生に「絶対に忘れない一日」を作れるのなら、僕はいくらでも支払っていいとおもってしまった。
【終電に揺られながらマイヘアを聴いていた頃の自分】
あとは曲が良い。オール明けの始発で聴いていたyonige、終電に揺られながら聴いたマイヘア、学生としての最後の飲み会での帰り道とクリープハイプ。エモい系のバンドの曲を「これは自分の曲だ」と陶酔しながら聴いたことある人なら、この小説は物凄く響くと思う。
小説の至るシーンでバンドの曲が表れるのは、僕らを小説の世界により引き込ませたいからだと思う。また、エモい系の「わかる」という感性で埋められた言葉が多ければ多いほど、作者のメッセージはテキストを超えて僕らに届く。
くるりやフジファブリックやキリンジ、ピロウズなどの少し前の世代のバンドの曲が、かなり良い。彼らの音楽を知れただけでもこの小説を読んだ価値があったなと思える。
【まとめ】
僕はこの小説を読み終わった瞬間に、パソコンの日記に感想を殴り書いた。改めて読み直してみると絶対に人に見せないような内容ではあるが、この瞬間に思ったことについていつか公開をしてみたいと思う。
またこれほど「誰かに読んでほしい!」と思えた小説も久しぶりだった。僕が好きなものは大抵僕の友人も好きなので、近しい友人に買ったり貸したり買わせたりした。結果として7人もの友人がこの本を読んでくれたのだが、これって結構すごくないか?
いつかちゃんと感想会というか、この小説を読んで何を感じたのかを皆と語り合いたい。その時にはBGMをピロウズにしようと思う。(2,253文字)